次の日ベッドから出るのもだるくかった。
朝から暑くてイライラする。
「だいたいお前が…」
「は、なんで私のせいなの?あんたが…」
またか…。
あたしは目の前の光景を見た瞬間溜息をつく。
うちの両親は不仲で、毎日毎日喧嘩をしてる。
こんなことになったのは…。
思い出すだけで吐き気がする。
お互い悪いくせに、自分のこと棚に上げて。
バカみたい。
2人の横をすり抜けて、テキトーに朝ご飯を作る。
作ると言ってもご飯に卵をかけるだけなのだけれど。
ご飯をキッチンで立ちながら食べて、そそくさと家の中から出ていく。
行ってきます、なんてこの家にそんな暖かい言葉は存在しない。
外はカンカン照りで、青空。
何もしていないのに、額にうっすら汗が滲む。
あーあ、こんななのに部活いくのか…。
葉月にも会いたくないし、だっるい。
チャリを出して、ののちゃんの家に向かう。
ののちゃんとは毎日一緒に部活に行っている。
「ののちゃん、おはよー」
インターフォンを押すと、すぐに出てくる。
相変わらず律儀で、ののちゃんはあたしを待たせたことがない。
「梨帆ちゃん、おはよ。行こー」
ののちゃんと他愛のない話をしながら、学校に行く。
ちょっと漕ぐだけで、汗が垂れる。
半分くらいの道のりを漕いだ、信号待ち。
「梨ー帆」
昔より少しだけ低くなったけど、すぐ分かる。
あたしの大好きな声。
あぁ、喋りかけられるのなんていつぶりだろう。
「光瑠…」
でも昔みたいに話は弾まないし、葉月と遊んだって言ってる光瑠とは喋りたくなかった。
「あ、青」
隣にいるののちゃんが信号を見て、口から零す。
「早く部活行かなきゃやっばいよね!ののちゃん、急ご!」
そう言ってさっさと漕ぎ出す。
別に急がなくたっていいのに。
あたし、何言ってんだろ。
「え、う、うん」
ののちゃんがよく分からないと言った顔でついてくる。
次の信号で後ろを振り返ると光瑠はもういなかった。