元々勉強が嫌いなあたしは、家で宿題以外の勉強はやったことが無かった。
…3日目で、心折れそう。
だいたい家に帰ってもご飯無いし。
自分で作らなくちゃいけないし。
それでもやんなくちゃ。
勉強、しなきゃ。
あたしをやる気にさせたのは、悔しくも藍だった。
「梨帆、お前勉強してる?オレ、勉強してないけど絶対梨帆に勝てる気がする」
ニヤッと笑う藍。
だけどその瞳には優しさがあって…。
あ、変わってない。
この顔のときは、あたしのことを思ってくれているときだ。
最近あたしが暗いの気づいてたのかな。
頑張ってみんなに笑ってるつもりだったんだけど。
藍には6年のころから通用しないらしい。
「へぇー、そーゆーセリフはあたしに勝ってから言いなよ」
藍に向かって笑い返す。
ありがとうなんて、照れくさくて言えないけど。
こういうことを言い返したりするのが、あたしにとって藍への感謝を伝えること。
藍に伝わってるかどうかは分かんないけど。
なんとか勉強をやり遂げて、テスト当日。
テストは出席番号順に座って受けると、担任が朝喋っていた。
番号順だと、あたしの後ろは藍で、斜め前が光瑠だった。
「はい、藍」
「もーちょっと手伸ばしてよ」
テスト用紙を回すときも文句ばかりの藍に、通常営業だなと苦笑する。
「自分が手を伸ばせばいいんじゃないでしょーか!」
「は、梨帆がもうちょっと伸ばせばいい話じゃん」
「あたしはこれ以上のびないってくらい伸ばしてますけど」
藍と言い合っていたら、
「そこ!うるさい。何を喋ってるんですか?静かにしてください!」
先生に注意を食らった。
気づけば周りに喋ってる人なんて誰もいなくて、急に恥ずかしくなる。
下を向こうとしたとき、斜め前の光瑠と目線が絡む。
『ばーか』
光瑠が、あたしに口パクでそう言ったのが分かった。
光瑠に認識された嬉しさか恥ずかしさかよく分からないけれど、光瑠が絡むと最近は顔がすごく熱くなる。
6年のときは慣れていたけど、最近光瑠に慣れてないから。
そんなことを考えているあいだに…
「初め!」
監督の先生が、そう言った。
あたしはシャーペンを持って問題用紙をめくった。