──「中学校に行って、困ること、悲しいこと、辛いこと。君たちはたくさんのことに直面すると思う。それらを全部乗り越えろとは言わない。逃げてもいい、隠れてもいい。だけど、その問題を乗り越えられると思ったとき。誰の力を借りてもいいから、正面から突破してみてほしい。ひとつひとつ突破すれば、必ず結果に繋がるから。いつまでも、君たちの味方です。」
担任の先生の話なんて、いつもはちゃんと聞いてなかった。
でも、今日は、1字1句、なにも漏らさないように。
聞き逃しがないように。
丁寧に聞いた。
それでもあたしのクラスには泣いてる人が誰もいなくて。
「誰も泣いてないじゃん!」
なんて笑いあった。
6年2組。最高だったよ。
「りほー!写真撮ろー!」
青空の下で、はづきが呼んでいる。
「今行くー!」
…っ。
この昇降口を出たら、もう二度とあたしはここに入れないんだな。
「ありがとう」
多分誰にも聞き取れない。
自分でさえもよく聞こえないような小さな声で。
そう呟いてから、あたしははづきに向かって走っていった。