──あっという間に卒業当日。
冬の寒さが和らいで、春の訪れを感じる。
綺麗な、青空。
卒業式らしい天気の下で、あたしたちは卒業する。
中学校になって、ひかるとクラス離れたら嫌だなとか。
新しい人たちと仲良くなれるかなとか。
今までさんざん考えてたくせに、今日だけはそんなこと考えられなかった。
──「卒業証書授与」
在校生だったときは退屈だった。
でも、なぜか今年は退屈じゃなくて。
ずっと思い出に浸っていた。
あたしの6年間は、毎日楽しくて。
輝いてて。
最高で、最強だった。
最近は喋らなくなっちゃったひーちゃん。
色々あったののちゃん。
あたしの気持ちを受け入れてくれたはづき。
ずっと同じクラスだったあお。
初めて恋した、ひかる…。
「藤田梨帆」
「はい」
「卒業生、退場」
ほんとに、ほんとに。
たくさんの感謝があって。
感謝しきれないほどたくさんの人に支えられた。
退場したあとは、教室に戻る。
真新しい中学校の制服姿に、花束なんて抱えちゃって。
本当に卒業するんだと実感する。
「りほー、ちょっとこれ持ってて」
前を歩いてるひかるが、振り返ってあたしに花束を差し出す。
「えーどーしよっかなー」
「オレから花束貰えんだからいいじゃん!」
…一瞬、息が止まるかと思った。
どういう意味なの?って思ったけど、そのまんまの意味だよね。
「…良くも悪くも、ひかるは最後までひかるだね」
「え?」
小さく呟いた言葉は、ひかるには拾えなかったらしい。
「ううん、なんでもない!」
そう言ってひかるの手から花束を取った。