卒業式の練習なんて、ここまでどうでもいいことはそうそうない。

学年主任の先生が、あたし達に向かって怒っている。

でも今、あたしにとって大切なのはそこじゃない。






隣に。

あと少しで吐息がかかるような距離にひかるがいる。

出席番号順に並ぶから、あたしとひかるは必然的にこうなるわけで。



「りほ、めっちゃ退屈じゃね?やることない」

先生が怒ってるっていうのに、呑気に喋りかけてくるひかる。

「いや、ちゃんと聞いてないと目付けられるからね」

そんなあたしの忠告も虚しく…。





「そこ2人!何コソコソ喋ってるんですか?」

あーあ。

先生は、明らかにあたし達の方を向いている。

これは確実に火に油を注いでしまった。





「「…すみません」」

あたし達は回りから注目されていた。

これは、凄まじく恥ずかしい…。





先生の目があたし達から外されたころ。

「りほ、ごめん。さっきのオレのせい」

なんて言うひかるが優しくて、優しすぎて。

そういう所も好きになるの。

「大丈夫大丈夫、りほもごめん」

そう言いながらひかるから顔を背けたのは、ただの照れ隠し。