「りほさーん?おれのことは無視ですか?」

さっきと全く同じ言葉が後ろから聞こえる。


「え、なに後ろあお?最悪」

「は、おれだって前がりほとか最悪なんだけど」

後ろの奴は古川藍(フルカワアオ)。

1年から6年までずっとクラスが同じで、ことあるごとにあたしに嫌がらせしてくる奴。

本人は『藍』って名前が女の子っぽくて嫌だって言ってるけど、あたしは結構いいと思ってる。

…なんて、本人には絶対言わないけど。





「じゃあ、次席替えするまではこの席でいきます」

ひかるの近くとか、なんとなく懐かしい。



はづきさんと隣なことよりも、あおと前後なことよりも、ひーちゃんと離れちゃったことよりも…

あたしは1番それを思った。









──「これで学活を終わりにします。次は算数なので用意してから休み時間にしてくださいね」

「きりーつ、ありがとうございました!」



あたしは、すぐひーちゃんの机に向かう。

「結構離れちゃったねー…」

「だね、でもりーちゃんの周りはすごい賑やかそうで楽しそう」

「あー、ひかるとあおねー…あいつらうるさいもん」

「ひかるさんとあおさん、ひよは苦手だけどりーちゃんは仲良さそうに喋ってるじゃん?」



あたしの学校は、男子も女子も、仲良くない人や、異性の名前は基本的にさん付けをする。

ひーちゃんは、男子が苦手だからみんなさん付けだ。

あたしは、仲いい人は呼び捨てで、あまり喋らない人はさん付けにしてる。




「まぁ…ひーちゃんもこの席楽しんで!」

あたしはよく分からないことを言って、自分の席に戻った。

ちょうど算数の教科書とノートを準備し終わると先生が入ってきた。





「それでは始めます」

「きりーつ、おねがいします!」