6年生になると、最上級生なんだからとしつこく言われた。
何かあると、下級生のお手本にとか、小学校最後なんだからとか。
先生たちは口を揃えて言うけど、あたしは全然そんな実感が湧かなかった。
ひかるへの感情を自覚しても、喋りにくいとかにはならなかった。
まだ、精神的に幼かったから。
『恋』ってどういうものなのか、理解していなかったんだと思う。
──「では席替えをします」
あとすこしで夏休みが始まるころ、先生が学活の時間に言った。
「くじを作ってきたので、端の人から引いてください」
ひーちゃんと近くになれないかなぁ…。
そう思って引いたくじだったけど、
「ひーちゃんどこ?」
「あ、9番だよ」
見事に離れてしまった。
「りほ、15番だった」
んーと、15番は…
黒板を確認する。
「1番前かぁ…」
窓側から2列目の1番前の席だった。
あたしは机を移動させる。
「あ、りほさん隣?よろしくね」
左隣は、あまり喋ったことがない、山本葉月(ヤマモトハヅキ)さんだった。
「はづきさん!よろしくー」
はづきさんは少し暗いイメージがあったけど、話してみるとすごく面白くて、明るい。喋りやすい人だった。
「りほさーん?おれのことは無視ですか?」
右隣から聞こえてくる声にあたしは驚く。
「え?ひかる隣?」
「なに今さら?ずっとここにいましたけど」
「ごめんごめん、はづきさんとのお喋りに夢中で…笑」
あたしはひかるの隣の席になった。
ひかるのことを、もっと意識し始めるのがこの頃だった──