「りほパンやりたい!」
「は?おれもパンやりたいんだけど!」
あたしとひかるは同じ給食当番の班で、言い合いをしてる。
こういう日にしか話せないから、なんとなく貴重な気がする。
「りほちゃんがパンやって!ひかるくんがオムレツね!」
他の子があたし達を取り持ってくれる。
パンとオムレツは同じお皿に乗せるから、必然的にあたしとひかるは一緒に作業することになる。
「あーあー、りほにパン取られたー」
「りほだってパンやりたかったんだもん」
あたしたちはお皿に乗せながら2人で話す。
「これさ、パンの上にオムレツ乗せないと入んなくない?」
「んー、だね。どーする?」
ひかるが、イタズラ顔で笑って言った。
「じゃあさ、オムレツの上にパンにしよーぜ」
「えっ、だってそれじゃ…」
「いーじゃん、2人の秘密ね」
ひかるのその言葉に意味はなかったと思う。
しかもそれくらいの『2人の秘密』、なんてことない。
なのにあたしは、異様にドキドキした。
「…なにこれ、病気…?」
あたしが小さく呟いたその言葉は、誰にも拾われることなく、静かに消えていった。