「行ってらっしゃい」


彼が手をつけなかった朝ごはんを暫く眺め
私も玄関へと向かいそう声をかけた。


そう、笑顔も忘れずに。



「…ん」


小さな返事は聞こえたが
やはり私に視線が行くことはない。



「…あ、気をつけてね」


せめてもの抵抗だ。

また一つ役目が減った私には
もうこれ以上に出来ることは無い。




いつもより一言多いことに驚いたのか
彼は軽く目を見張った。



それでも、その視線は私には向かないまま。






そうして扉を開けて出ていってしまった。