「今、行きます」

斗真が振り返って私の不安そうな表情に気付くと、
「新しく入ったマネだから」
珍しく優しい表情で教えてくれる。

あーなるほど、だからか。
うんうんと一人納得していたら、その先輩と目が合いにこやかに手を振られた。

振りかえす私を見て、微かに笑みを浮かべた斗真が首に掛けていたタオルを私の頭に乗せる。

「試合見とけよ」

軽く笑った斗真が背を向け体育館に走っていく。

そのタオルから柔軟剤の香りとほのかに斗真の香りが混じる。

「大好き」

タオルを握りしめながらその背中を追いかけた。


END