汽車は赤いレンガ造りの駅のホームに止まった。
ピーッ という汽笛とともに汽車のドアが開いた。


僕は切符を車掌さんに見せると駅の屋根の下に潜り込んだ。


「止みそうにないなぁ…おばさん心配してるかな？」

僕はコートにかかっている水滴を払いながらそんなことを考えていた。




「お困りですかな？」

「え？」


振り向くとそこには先ほど一緒に降りたと思われるかなり年老いたの男性が立っていた。


細身で口髭を蓄えており、目には皺がはっきりしていてとても優しそうな印象をうける。


しかしながらとても立派な眉毛とジェントルマンのような黒のスーツ、そして何よりその深い声が凛としたオーラを解き放ち男性を力強く見せる。