「来原っ!」


移動教室のため、廊下をトボトボと歩きながら買い出しのことについて頭を抱えていると、後ろから名前を呼ぶ声がしたので振り向く。


「飯田」


「なんか、ごめんな」


「え、なにが」


「何がって…真壁のことだよ」


「あぁ…ううん。大丈夫だよ」


その場しのぎで良く使う『大丈夫』って言葉。人を頼ったり弱音を吐くことにも、勇気が必要なんだと最近感じる。


「俺…行こうか?買い出し」


「え?でも…学級委員は委員会掛け持ちしちゃダメだって…」


「その日一日ついて行くだけじゃん」


「けど…」


「何。俺じゃ不満かよ。如月先輩が良かった?」


「そんなこと言ってないじゃんっ!」


ただ、飯田はみんなよりも忙しいから。
学級委員も部活動も。


「土曜日は部活休みだし、暇だから」


「うん…」


『何かあった時、責任を取るのは───』


そうだ。
如月先輩が言っていた。
もし私が1人で買い出しに行って、ヨロヨロとたくさん荷物をもって、転んで荷物を道に盛大にぶちまけてしまったら。


それこそ面倒臭いことになるもんね。


「じゃあ、お願いしてもいい?」


「おうっ」


飯田の力強い返事が、廊下にかすかに響いた。