「柚月、柚月」

「ふぇ?」


気付くと、彼方が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。


「大丈夫? いったん休もっか。ごめんねなんか、本当に余裕なくて」


何で彼方が謝るのか。

なんでいったん休むのか。


……止めてほしく、ないな。


「……かな、た」

「ん? なに?」

「止めちゃ、やだっ」


「えっ」と声を漏らして、彼方は目を丸くする。

そんな彼方の反応を見て、ぼーっとしていた頭がだんだんと正常に戻っていった。


って、私ってばなに言っちゃってんの!?


「ああああ違うの彼方! いや違くはないんだけど! 今のはその、えっと、だって……だって、キス気持ちよくて!」


その瞬間、彼方も固まる。私も固まる。

だから、私いったいなに言っちゃってるの!?


「……へぇ、気持ちよかったんだ」

「っ!?」


今度はニヤリとした笑顔で、私の顔を覗き込む彼方。

私はなにも言い返すことができず、というか言い返そうとしたら、また余計なこと言っちゃいそう……。