「……うん。俺も、柚月の全部が欲しい」
ゆっくりと、彼方が私の頬に触れる。
「俺の全部をあげるから、柚月の全部が、俺は欲しい」
「じゃあ、私の全部をあげるから、彼方の全部を私にくれる?」
「もちろん」
頬に触れた彼方の手に、自分の手を添えた。
この約束だけで、私たちの関係なんて決まったようなものだけど、
私はまだ、一番肝心なことを、彼方に言ってはいないのだ。
「……彼方」
彼方の手が温かい。
その温もりが、私の心を落ち着かせてくれる。
そして──……
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…