叫び声に近い、鬼龍院くんの声。
身体の震えが止まらない。
どうしよう、鬼龍院くん……怒ってる。
「鬼龍院く、ごめ、あの……私、なにか気にさわっちゃったかな。ごめんね、私」
「僕の顔色なんてうかがうのはやめてくれ。今は近衛クン、自分のことを最優先に考えるべきだ」
「自分の、こと? わ、私なら大丈夫だってば……大丈夫、だから……大丈夫」
なにが、
大丈夫?
「……柚月?」
後ろから聞こえてきた声に、頭の中が真っ白になる。
私はまだ鬼龍院くんに抱き締められたままで、うまく後ろが見えないけれど……
これは、彼方の声だ。
「やあ一色クン、近衛クンをほったらかしていったい何をしてたんだい?」
「……あんたこそなにしてるの……柚月から、離れて」
「嫌だと言ったら?」
「柚月から離れろ!!」
ビリビリと、彼方の声が教室の中に響き渡った。