「彼方は私をほったらかしてなんかないよ! ただ……ただ、私が悪いだけ。私が役立たずだから……私になんの取り柄もないから……だから、頼ってももらえなくてっ」
「そんなことはない! 近衛クンはっ」
「そんなこと……あるよ」
「違う、近衛クンは」
「例えほったらかしにされたとしても、私を置いていっちゃったとしても、仕方ないんだよ……だって私には……なにも、ない」
……昔から、そうだったから。
「もう、なんで鬼龍院クンがそんな顔してるの。ほら、いつもみたいに笑おうよ! 笑顔が一番だよ!」
「……近衛クンは、今自分がどんな表情をしているのか、分かってないのかい?」
「へ?」
どんな?
私?
え? あれ?
「いつもどおりだよ! 大丈夫だか──」
「どれだけ自分が苦しそうな表情をしてると思ってるんだ!! 大丈夫だなんてそんな嘘つくだけ無駄だ!!」