「彼方、まだ教室にいるかな」
私のことを手伝うと言ってくれた彼方に、今日も大丈夫、私がやるからと教室を出て、
その時に「先に帰ってていいから!」と声をかけたのだけれど……
「結構時間もたっちゃったしさすがに帰ってるよね……それに彼方は当日、接客で大変だろうし、今はしっかりと休んでもらって……それで」
……私は、彼方の役に立っているだろうか?
「もっと……頑張らないと」
〝俺……そんなに、頼りない?〟
あの時の言葉が、頭の中に嫌な感じに響く。
頼りないのは、きっと私だ。
むしろ彼方はみんなに人気で、カッコよくて、頭もよくて、優しくて……悪いところなんて全くない。
それに比べて私は……
「あー、ダメダメ! 落ち込んでてもしょうがないでしょ私!」
だから頑張るのよ、柚月! と自分に気合いを入れたところで、ふと聞き覚えのある声が聞こえてきた。