「…………っぁ」
そう声を漏らしたのは私だった。
おもむろに自分の頬に触れてみると、ちょっと濡れていて……
ああ、なんだ私……泣いてるのか。
「ご、ごめん彼方。ちょっと待ってね」
このままじゃ彼方は困ってしまう。
泣き止め。泣き止め。
「柚月……ご、ごめっ」
「なんで彼方が謝るの！ ほらもう大丈夫だから！」
「……柚月っ」
またなにか言おうと口を開いたが、彼方が言葉を発することはなかった。
そして私は、この話はこれで終わりと言うように、
「彼方、私は大丈夫だから！」
なんて、精一杯の笑顔を彼方に返したのだった。
実はこの時、この一部始終をまさかセレナちゃんに見られていたなんて、
この時の私には知るよしもなかった。
