「違う、違うよ彼方! 彼方はほら、当日は表に出なきゃだし、大変でしょ? それまで体力温存しとかないと!」

「だからって、柚月が一人無理する必要なんてないよ」

「無理なんてしてないよ! 彼方こそ無理しちゃダメなんだってば! 彼方、凄くカッコいいから、ほら、他のクラスの子たちだって、当日また彼方の執事姿が見られること楽しみにしてるって言ってたよ!」


彼方は求められている。

だけど私は違うから。


そこにいるだけじゃ、だれも私のことを見てはくれないから。


だから人一倍頑張って、認めてもらいたくて……



「柚月、お願いだから一人で頑張らないでっ」



……私は、彼方とは違って『なにもない』から。



「……彼方には、分かりっこないよ」

「……柚月?」

「っ!? あ、いや、そのっ、なんでもない! なんでもないから!」