「───ねぇ、キミ」


突然誰かに声をかけられた


声のした方へ顔を上げると、そこにいたのは……


「は、羽莢くんっ!?」


名前を呼ばれた彼は、にこりと微笑み、こちらへ歩み寄ってきた


どうしたのだろうかと、頭に疑問符を浮かべていると



「もしかして、これを探してた?」


そう言って、差し出された手に乗っていたのは、私が泣きそうになりながら探していた物だった


「あっ!私の鍵……!」


「誰かが蹴っちゃったのかな?

そこの空き教室の端に落ちていたんだ」


鍵を受け取ると、「見つかって良かったね」と彼は更に笑みを深める



「うんっ!拾ってくれてありがとう!」


私がお礼を言うと


「どういたしまして。次の授業遅れないようにね」


彼はそう言って、曲がり角を曲がり、姿を消した



私は彼が去って行った方を見つめ、手の中にある鍵をギュッと握りしめた───