【トライアングルラヴ】
“ぶっちゃけさ、男二女一って一緒にいて揉め事とかないの?”
“えー、無い無い!
むしろあたしら恋愛感情とかお互い無いしさー”
……ごめんなさい、皆。
私、仲松沙稀は嘘をついていました……。
「好き、なんだけど」
「う、うん……。
知ってる……だってそれ八回目だし……」
「じゃあ返事は?」
「む……無理ですぅぅぅ!」
バリバリ恋愛事で揉めています……っ!!
嘘をついたとは何のことかと言いますと。
私には同い年で二人の男子の幼なじみがいる所から説明はスタートします。
まず一人目の幼なじみ……
「あっそー。
ま、分かってた上だけど」
「相変わらず……燐は何て言うか……馬鹿なの?
馬鹿なんですよね?」
冒頭でいきなり告白をかましてきた大河内燐。
他よりもかなり茶色い髪は中学のサッカー部時代で太陽に当たった代物だ。
涼しげな目元とスラリと通った鼻筋、形の整った唇、甘い声。
俗に言うイケメンである。
学校でもただのモテ男である彼に告白されたら卒倒か失神……まぁ気絶するくらい嬉しい事実なのだろうが……。
産まれた時からの付き合いともなればすっかり目が肥えてしまった。
「オレが馬鹿なら沙稀は大馬鹿者なんじゃねーの?」
「な、なんと失礼な……っ!」
「オレの告白断るってことはまだ柊耶のこと好きなんだろ?」
「う、ぐ……」
図星を突かれてはぐうの音も出ない。
まさにその通り。
二人目の幼なじみこそがさっき燐の言っていた柊耶こと久保柊耶である。
彼も産まれた時からの付き合いで私が今もずっと好きな人。
「さっさと告ればいーもんを」
「だーかーらー。
あの時がトラウマ過ぎて無理」
あの時というのは小学校六年生の時。
卒業のイベントに紛れ、それとなく告白してみたところ。
“沙稀とは仲良くしてるけど、恋人ってなると違う”
……いやぁ。
若いながらあの返事の言葉は突き刺さったね……。
言葉の刃を抜いた今も傷は痛々しく腫れている。
「なら諦めろ」
「無理。
人間そんな簡単に割り切れないし」
「あ、いたいた。
探したんだけどー、二人とも」
「し、柊耶!」
活発で単細胞な燐と比べ、内向的で落ち着いた雰囲気を纏った柊耶のお出まし。
私のテンションは無意識に右肩上がり。
中学の頃から文化部だったため髪も太陽の光線を浴びずに艶があり、私からしても羨ましいほど。
綺麗な二重の目は引き込まれるような存在感があって燐と同じく日本人にしては珍しい高くて整った鼻筋。
加えて頭がめちゃくちゃ良くていつも勉強を教えてもらっている。
燐と引けを取らないモテ男である。
「珍しく燐が三人で帰ろうとか言うから待ってたら全然来ないしさー」
「ご、ごめんごめん!
なんか燐が……
って、なんでもないや……!」
ついうっかり告白のことを漏らしてしまいそうになって踏み留まった。
ジロッと燐からもお咎めの視線をキャッチして柊耶から見えない角度でベーッと舌を出す。
「こんのっ……沙稀ー!」
「えっ……ちょ、急にどうしたのさ、燐」
「どうしたんだろーね?
保健室送りにしてあたし達で帰ろっかー?」
「それはオレが許可しねぇ!」
そんなこんなで現在十七歳。
恋も勉強も忙しい青春真っ只中である。
「にしても暑いよねー……っ」
「まぁもう七月だしな」
「沙稀は日焼け止め塗らないとね」
「ほら燐聞いたー?
燐にはこの気遣いが不足してんの!」
「焼いて黒くしたら細く見えんじゃねーの?」
「……そういうことじゃないでしょぉぉ!」
この二人はイケメンという共通点以外は何に対しても見事に対極である。
それでも今まで一度も喧嘩した所を見ていないのが奇跡である。
いや、対極過ぎてむしろ一周回って相性が良いのだろうか?
「あ、柊耶くんやっと帰って来たー」
「愛実さん!」
そんなことばかりぐるぐる考えて歩いていればもう柊耶の家の前。
私と燐の家はもう少し奥にある。
しかし今はそんなことはどうでもいい!
「……ん?
なぁ、あの美人誰?」
「……前原愛実さん。
柊耶の家庭教師だって。
先週から来てる三つ上の人だよ」
コソッと耳打ちしてきた燐に私も小声で返事をする。
今一番大事なことは……
柊耶の家庭教師として週三日家に来ている愛実さんについてだ。
現在大学生で教師を目指しているらしくそのために家庭教師のバイトを始めたらしい。
家庭教師だからそれ以上のことは無いんだろうけど私はヒヤヒヤして仕方無い。
何せ相手は超絶美人なのだから。
「……まじでかー。
つか受験まであと一年あんのにもう勉強かよー」
「……受けるの東京の大学で……
偏差値も高いらしいし……」
私の進路は地元で悩み始めている。
でも……柊耶は自分の進路をハッキリ見据えてそのために今から勉強を始めている。
来年……私達と柊耶は離れ離れになる。
「……ほんと……凄いよ、柊耶は……」
「……沙稀……」
「……やっぱ……あたしには手が届かない相手なのかも……」
愛実さんに駆け寄ってあれこれ話している柊耶の横顔をそれ以上見ていたくなくて。
視線を落として足元の小石を蹴る。
「何言ってんだよ。
今まで散々時間かけてアプローチしてたじゃねーかよ?」
……そうだ。
小学生の修学旅行から中学校の林間学校、研修、体育祭に合唱コンクール、またまた修学旅行。
何かしらのイベントごとに少しでも柊耶との距離を縮めたくて色々と燐にも協力してもらっていた。
「あの時から何にも伝えないまま離れるとか絶対後悔するぞ」
「……うん、」
……分かってる。
分かってるけど……
「……やっぱりまたあの時みたいに……って考えるとどうしても……」
“ぶっちゃけさ、男二女一って一緒にいて揉め事とかないの?”
“えー、無い無い!
むしろあたしら恋愛感情とかお互い無いしさー”
……ごめんなさい、皆。
私、仲松沙稀は嘘をついていました……。
「好き、なんだけど」
「う、うん……。
知ってる……だってそれ八回目だし……」
「じゃあ返事は?」
「む……無理ですぅぅぅ!」
バリバリ恋愛事で揉めています……っ!!
嘘をついたとは何のことかと言いますと。
私には同い年で二人の男子の幼なじみがいる所から説明はスタートします。
まず一人目の幼なじみ……
「あっそー。
ま、分かってた上だけど」
「相変わらず……燐は何て言うか……馬鹿なの?
馬鹿なんですよね?」
冒頭でいきなり告白をかましてきた大河内燐。
他よりもかなり茶色い髪は中学のサッカー部時代で太陽に当たった代物だ。
涼しげな目元とスラリと通った鼻筋、形の整った唇、甘い声。
俗に言うイケメンである。
学校でもただのモテ男である彼に告白されたら卒倒か失神……まぁ気絶するくらい嬉しい事実なのだろうが……。
産まれた時からの付き合いともなればすっかり目が肥えてしまった。
「オレが馬鹿なら沙稀は大馬鹿者なんじゃねーの?」
「な、なんと失礼な……っ!」
「オレの告白断るってことはまだ柊耶のこと好きなんだろ?」
「う、ぐ……」
図星を突かれてはぐうの音も出ない。
まさにその通り。
二人目の幼なじみこそがさっき燐の言っていた柊耶こと久保柊耶である。
彼も産まれた時からの付き合いで私が今もずっと好きな人。
「さっさと告ればいーもんを」
「だーかーらー。
あの時がトラウマ過ぎて無理」
あの時というのは小学校六年生の時。
卒業のイベントに紛れ、それとなく告白してみたところ。
“沙稀とは仲良くしてるけど、恋人ってなると違う”
……いやぁ。
若いながらあの返事の言葉は突き刺さったね……。
言葉の刃を抜いた今も傷は痛々しく腫れている。
「なら諦めろ」
「無理。
人間そんな簡単に割り切れないし」
「あ、いたいた。
探したんだけどー、二人とも」
「し、柊耶!」
活発で単細胞な燐と比べ、内向的で落ち着いた雰囲気を纏った柊耶のお出まし。
私のテンションは無意識に右肩上がり。
中学の頃から文化部だったため髪も太陽の光線を浴びずに艶があり、私からしても羨ましいほど。
綺麗な二重の目は引き込まれるような存在感があって燐と同じく日本人にしては珍しい高くて整った鼻筋。
加えて頭がめちゃくちゃ良くていつも勉強を教えてもらっている。
燐と引けを取らないモテ男である。
「珍しく燐が三人で帰ろうとか言うから待ってたら全然来ないしさー」
「ご、ごめんごめん!
なんか燐が……
って、なんでもないや……!」
ついうっかり告白のことを漏らしてしまいそうになって踏み留まった。
ジロッと燐からもお咎めの視線をキャッチして柊耶から見えない角度でベーッと舌を出す。
「こんのっ……沙稀ー!」
「えっ……ちょ、急にどうしたのさ、燐」
「どうしたんだろーね?
保健室送りにしてあたし達で帰ろっかー?」
「それはオレが許可しねぇ!」
そんなこんなで現在十七歳。
恋も勉強も忙しい青春真っ只中である。
「にしても暑いよねー……っ」
「まぁもう七月だしな」
「沙稀は日焼け止め塗らないとね」
「ほら燐聞いたー?
燐にはこの気遣いが不足してんの!」
「焼いて黒くしたら細く見えんじゃねーの?」
「……そういうことじゃないでしょぉぉ!」
この二人はイケメンという共通点以外は何に対しても見事に対極である。
それでも今まで一度も喧嘩した所を見ていないのが奇跡である。
いや、対極過ぎてむしろ一周回って相性が良いのだろうか?
「あ、柊耶くんやっと帰って来たー」
「愛実さん!」
そんなことばかりぐるぐる考えて歩いていればもう柊耶の家の前。
私と燐の家はもう少し奥にある。
しかし今はそんなことはどうでもいい!
「……ん?
なぁ、あの美人誰?」
「……前原愛実さん。
柊耶の家庭教師だって。
先週から来てる三つ上の人だよ」
コソッと耳打ちしてきた燐に私も小声で返事をする。
今一番大事なことは……
柊耶の家庭教師として週三日家に来ている愛実さんについてだ。
現在大学生で教師を目指しているらしくそのために家庭教師のバイトを始めたらしい。
家庭教師だからそれ以上のことは無いんだろうけど私はヒヤヒヤして仕方無い。
何せ相手は超絶美人なのだから。
「……まじでかー。
つか受験まであと一年あんのにもう勉強かよー」
「……受けるの東京の大学で……
偏差値も高いらしいし……」
私の進路は地元で悩み始めている。
でも……柊耶は自分の進路をハッキリ見据えてそのために今から勉強を始めている。
来年……私達と柊耶は離れ離れになる。
「……ほんと……凄いよ、柊耶は……」
「……沙稀……」
「……やっぱ……あたしには手が届かない相手なのかも……」
愛実さんに駆け寄ってあれこれ話している柊耶の横顔をそれ以上見ていたくなくて。
視線を落として足元の小石を蹴る。
「何言ってんだよ。
今まで散々時間かけてアプローチしてたじゃねーかよ?」
……そうだ。
小学生の修学旅行から中学校の林間学校、研修、体育祭に合唱コンクール、またまた修学旅行。
何かしらのイベントごとに少しでも柊耶との距離を縮めたくて色々と燐にも協力してもらっていた。
「あの時から何にも伝えないまま離れるとか絶対後悔するぞ」
「……うん、」
……分かってる。
分かってるけど……
「……やっぱりまたあの時みたいに……って考えるとどうしても……」