2000円で預かった絵を籠に入れて、また歩いていると、



「おーい、ちょっと!」



呼び止められて、見るとヤンキーがいた。見ただけでわかる。3年生のヤンキーだ。



「な、なんでしょうか?」



緊張しながら訊くと、ヤンキーはつかつかと歩いて来て、お釈迦様の絵を手に取った。



「これ、売り物か?」



「まあ、はい……。」



「へえー、なんか縁起良さそうな絵だなこれ。仏の絵の横に『天上天下唯我独尊』って文字が書いてるじゃねーか。ほら、見ろ。オレの学ランの刺繍。同じ『天上天下唯我独尊』だ。」



確かに、「天上天下唯我独尊」は、お釈迦様の言葉だ。でも、それを「不倶戴天」と同じように、ヤンキーか何かのいい言葉だと勘違いしている。バカだ。