「よかったらうちに泊まって行きませんか?」
「うち?」
おじさんは、怪訝そうな目で私を見た。
こんな暑い中、長袖のシャツの上にベストを着ているなんともお洒落な格好。でも、崖から落ちたのか、所々泥が固まって汚れている。穴も空いている。
おまけに、髪の毛も髭もボサボサで、しばらくお風呂に入っていないと見た。わかるのだ。そういう経験が私にもある。
「まあ、泊ってやらんこともないが……お前のところの宿は何と言う?」
「うちは、さがみ屋と言います。見た目はボロボロの宿ですけど……。しかも、従業員のおばあさんが倒れちゃって、今は、私を入れて5人の高校生で切り盛りしてるんです。どうか、私たちを助けると思って、泊ってくれませんか?」
おじさんの顔がますます怪訝になる。
「高校生だけで?」
「はい。」
「そうか……。」
そして、しばらく考え込んだ後、おじさんは、口を開いた。
「条件がある。」