雄ちゃんに対する思いは、日々募っていくばかりだった。

でも、伝えたい気持ちが伝えられずに1日が過ぎて行くーーー。
恋愛に形なんていらないけれど、Twitterで知り合った彼に、どうやって【告白】したら良いのか分からなかった。
所属する教会でも“自分が求めている人”が与えられる様、牧師先生や教会の仲間に祈って貰った。
「もう結婚なんて無理やから、Ravelさんみたいに“生涯独身”貫くわ!」
RavelことMaurice Ravelは、フランス近代音楽史上で欠かせない人物と言っても良い程、音楽会を大きく改革させた作曲家だ。彼が生きていた当時、作曲した作品が余りにも斬新だった為、ローマ大賞は受賞出来ず、後に【ラヴェル事件】を招く事になった。そんなRavelは大の猫好きとして知られ、生涯独身を貫いた事でも知られている。
【亡き王女のためのパヴァーヌ】・【La Valse】は何度聞いても感動する名曲。折角雄ちゃんの事を好きになれたけど、碧は個性的でやんちゃくれだから、受け入れて貰えるかどうかも心配でならなかった。
お互いに“フランス好き”同士で知り合えたけれど「好きな音楽のジャンルが合わへんかったら、もう結婚なんて不可能やわ!」と、勝手に先入観を作ってしまった。
でも、前向きになれないそんな私の人生を180°も変えてくれたアニメに出会った。
雄ちゃんと知り合った翌年、碧の大好きな【涼宮ハルヒの憂鬱】のスピンアウト作品【長門有希ちゃんの消失】がアニメ化決定したと知り、一人で大喜びしていた。

「(*-`ω´-)9 ヨッシャァ!!
長門有希ちゃん観れるお陰で、これから毎朝爽やかに出勤出来るぞ!!!!」

職場で同僚にゲスいパワハラを受け、自分の身体はもうボロボロになってたけれど、そんな時に大好きなアニメに出会えただけで、大分気が楽になった。
でも、それを超える大きな喜びが待っていたーーー。

消失のアニメ放送が開始して暫く経った日、大好きな私鉄の1つである【阪急電鉄】が劇中で登場し、碧の気持ちは関西方面へと向き始めたのだ。

「何時か阪急沿線で暮らしたい...」
私の口から思わず出てしまった言葉。
どうして出ちゃったのか分からないけど、東京に赴任した当初から「何時か大阪に帰りたい!」を口癖に生きて来ただけに、関西への思いが日に日に強くなるばかりだったのだ。

そして、長門有希ちゃんがキョン君に抱かれ「好きです(*´ω`*)♥」の気持ち一杯の顔になったシーンで、思い掛け無い行動を犯してしまったのであるーーー。
何も考えず、思わず雄ちゃんにLINEでメッセージを送り始めたのだ。

「雄ちゃん、今晩は。
どうしても伝えたかった事があるから、今日は仕事終わったら早く帰宅したんよ。」
「僕に伝えたい事って何や、碧。」
「実は私...
これから雄ちゃんと共に歩んで行きたいと思ってんねん!!」

失敗する覚悟で【告白】してしまった。
これで片想いも終わると思って告白したけど、失敗どころかとんでもない結末になってしまった。

「碧、僕も前からあんたの事好きやってん!
頼りないけど、絶対碧を幸せにするからな!!!!」

私と雄ちゃんが、本格的に交際を開始し始めた瞬間だった。告白して以降、SNSでのやり取りは更に増え、翌月にはリアルに出会う事になった。
学生時代に“教授殺し”と言う渾名を貰い、同期からは嫌われまくった碧ーーー。
そんな辛かった時代が、もう【過去の話】で収まりそうな日が近付いて来ている。