翌日。

始業時間になっても、席はいくつか空いていた。これは俺の推測に過ぎないが、休んでいるメンバーを見るに、きっと撮影や仕事で都合がつかないのだろう。ひょっとすると、皆勤賞はここではもっとも偉大な賞かもしれない。

「君」

ホームルーム終了後、隣に座った男子が話しかけてくる。現役高校生社長として話題の、金野紋太(カネノ・モンタ)だった。

「昨日のテレビ、見たかい? 日野君が出ていた深夜枠のあれだよ」
「ああ…見たけど、それが?」
「『それが?』って……君も見たなら分かるだろう? 日野君の無学さを。あの程度の問題が分からないなんて、よくもまあここにいられるよなって、君もそう思うだろう?」

金野はその肥えた身体から、独特の粘着質な喋りを紡ぎ出していた。金野自身にその気はなくても、どこか馬鹿にしたように聞こえる、そんな口調と声だった。

「俺は人を馬鹿にする趣味はないぞ」
「そんなこと言って……よく考えてみなよ。日野君はただ見た目が美しいという、それだけで脚光と金を得ているんだ。僕は確かに彼と比べて見た目はかなり劣る。だがその分だけ、学と経営手腕があると自負している。にも関わらず、だ。例えば僕が僕の会社のことを喋るより、彼女が会社のことを喋った方が圧倒的に拡散力がある。おかしいと思わないかい?」

昨日ほぐれた思考が、もう一度束ねられていくように感じた。

「僕にはその分、金を増やすことが可能だが……僕が金を増やしたところで、何も注目されない。才能の合計値は同じはずなのに、こうも違ってしまうのは、どうにも合点が行かなくてね」