その夜。俺はなかなか寝付けずにいた。特に理由はなかったが、様変わりしすぎた学園生活に、2日目ながら疲れていたのかもしれなかった。

何とはなしに部屋のテレビをつけると、深夜帯のバラエティ番組に日野が出演していた。マスク越しの美貌もさることながら、メイクや照明で彩られた日野はより一層美しく見えた。人気になるのも納得である。

そんな日野を見ながら、俺は今日言われたある言葉を思い出していた。

「阿倍くんみたいな一般的な人が、かえって目立っちゃって」

字面だけ見れば皮肉として捉えられるが、俺は別に嫌な気持ちなどしなかった。言っていることは真実そのものだし、俺は別に平均以上なら評価はどうでもいい。目立てるなら御の字、目立たず埋まらず、それでいい。

「『続いてのコーナーは、こちら!』」

司会者のかけ声で始まったのはクイズコーナーだった。日野も解答者としてそこにいた。

……それを見て、俺は衝撃を受けた。

クイズは常識レベルだったのだが、日野はまるで答えられなかった。言葉を選ばず言えば「バカ」だった。少なくとも俺よりは圧倒的にバカだった。モデルとして煌びやかに生きている代償を払っているかのように思えた。

そう考えると、俺は日野と大して変わらないのではないか? そんな疑問が頭をよぎった。

日野は俺より格段に目立っている分、格段にバカだ。俺と比べると、ポテンシャルは差し引きゼロなのではないか。俺と日野は同じようなものと言えるのかもしれない。だとしたら……。

そこまで思考を巡らせると、ようやく眠気が立ち現れてきた。思考が糸のようにほぐれ、俺は眠りについた。