はらはらと桜が舞い、長い長い桃色の絨毯が道路にひかれた頃。

私、花倉優は遂に高校生になりました!

辺りを見回せば自分と同じように制服に着られている感満載の生徒が皆期待と不安に満ちた顔で歩いていく。

よし、友達沢山つくれるように頑張らなきゃ。

頬を数回軽く叩き、気合いを入れ直す。


「なーにやってんだよ、優。」


突然後ろから聞こえてきたのは自分の名を呼ぶ男の子の声。

高すぎず低すぎない耳当たりのいいその声は随分聞き慣れたもので思わず緩む頬を隠すことの無いまま振り返る。


「おはよ、悠。」


振り向いた先には思った通りの青年が自分と同じ学校の制服を着て立っており、

履き慣れぬ靴であろうとお構いなしに彼に駆け寄る。

彼は田崎悠、私が中学生の頃からの友人。下の名前が同じことがきっかけで今では親友の一人と呼べるほど仲が良い。

彼もまた制服に着られているかと少々期待して見てみるが、そこには期待外れにも制服を着こなしたただの好青年。

やはり自分とは大違いなようで思わず溜め息がこぼれる。


「入学初日に溜め息つくなっての」


そんな声と共に小さなデコピンがあたる。


「いたっ…もう、赤くなったらどうするの」


彼なりの優しさか、力のあまり入っていなかったデコピンではあったが

やはり男女の力の差、少々赤くなっているであろうおでこに手を当て

じと、と音がつきそうな若干恨みがましい目で彼を見上げる。

元々身長の高くない私に対し成長期も来てぐんぐんと背の伸びた彼の顔を見るには見上げなくてはいけないのが難点だ。


「そこのダブルゆう、私を忘れないでくれる!?」


びしっとこちらを指さし同じ中学校であった生徒しか知らないあだ名で私達を呼んだのは

竹本みお、彼女もまた悠と同じ私の中学時代からの親友だ。


「みおちゃんもおはよー」


ごめん、ごめんと謝りながら挨拶を交わす。

悠、私、みおの順に仲良く並んで向かう先は桜の咲き誇る私達の新たな学び舎

期待に胸を弾ませ私達は新たな一歩を踏み出した。