一番手は羽鳥が立候補していた。最近の宇宙の研究をマンガ混じりに説明しているという本の紹介で、彼らしいややトンデモよりな内容だが受けた。トップを危なげなく終わらせる。

二番は1年生の女子。最近映画化もされたラブストーリーを、目をキラキラさせて紹介した。

美雨は場が出来上がって緊張感が薄そうな三番目にしてもらっていた。でも集まる視線を感じた途端やはり真っ赤になってしまい、最初の言葉が出ない。

前列で「美雨ちゃんがんばれ!」と由香たちが声をかけてくれている。その横に羽鳥を見つけて、ひとつ息を吐く。

面白いと言ってくれた、その声を思い出す。

「だ、誰にでもきっと、何度も読みたくなる本があると思います」と美雨はつっかえながらも話し始めた。

「私が何回も読んでいるこのシリーズは、人の姿をして暮らす烏たちの物語です」

冒頭のシーンを情景が浮かぶように説明するうち、周りがあまり気にならなくなった。シリーズ構成まで語りだしたのはよかったが、5分の制限時間があっという間に来て話の途中で強制終了のベルが鳴る。

「ありがとうございました!」

慌ててぺこりと頭を下げた美雨に、暖かい拍手が降り注いだ。