「ねえリト、運命の相手っているの?」

この会話は誰にも聞かれないのをいいことに、美雨はついでに夢見る乙女心をさらけ出してみた。

「いるよ、たくさんいる。君が出会う全ての人が、ある意味運命の相手だ。君に出会う運命を携えてきた。僕もね」

リトと話すのは難しい。哲学者ってきっとこんな感じなんだろう。ソクラテスとか、延々と問答をしていたという。



結局のところ何もわからなかったが、自分は恋などしてないんだろうと美雨は少しスッキリした。

沙織の好きな人を好きだなんて、そんなの全くおかしい。羽鳥はたくさんの運命の相手の1人で、きっとこれが男友達というやつなのかもしれない。

そう納得して、リト・ノートには短くメモを残した。

・恋というのはエゴのゲーム。
・運命の相手はたくさんいる。ある意味全員。

これくらいなら、羽鳥が読んでも見逃してくれるだろう。1人でリトと話したことへの恐怖はなかったけれど、こんなことを聞いているのは知られたくなかった。