朝読書の時間に熱心に読んでいる姿を見かけた。休み時間にも席を離れない。どうしたの急に、という周りの声は気にもとめていない。羽鳥がやる気を出した時の集中力にはすごいものがあった。

沙織もペラペラとめくって見たものの絶対無理だと早々に諦めたようだ。周りは気づいていないようだが、ほぼ毎日次の巻に変わっていることに美雨はこっそり驚いていた。



翌週、全部読みきったという羽鳥は「1冊目はそこそこだけど、2冊目から面白かった」という。

「読み進めるとだんだん面白くなるってのはあるよな。でも字だけでイメージするのが難しかった、人から鳥に変身するとことか」

「羽鳥って本読むんだね」

「こういう系統は読まないけど。でも美雨の話聞いて読もうかなと思ったから、いいんじゃないの、これで」

読み直したいけど時間かかるよな、とローテーブルに積んだ本を眺めている。

「バトルが終わったらまた貸すよ」と美雨が言うと、それ助かる、でも眠い、と目をこすった。あくびをしてるくせに、美雨の練習には付き合ってくれる。

「絶対言いたいこと決めて手に書いとけば。あとはその場で喋ればいいよ。練習しすぎるとロボットみたいになりそう」

勝手にどんどん話している羽鳥に、ロボットってなにと怒ってみせたけれど、「面白かった」と言う言葉に確かにホッとしていた。

バトルで話す内容を相談しながら、何巻が面白いとか登場人物の誰が好きとか色々話した。あれ、話し相手が欲しいっていうのが叶っているみたい、と思ったが特に言わなかった。