リトにお願いする方法は、美雨がちゃんと考えておいた。

「今で、自分のことだよね? 緊張しないで、人の前で話せるようになりたいの」

「しないことを願うことは難しいね。何をしたいかなんだよ」

今、だけではないらしい。しないはダメ、したいこと。メモしているうちに羽鳥が機転を利かせ別の言葉を探す。

「いつも通りに話せるっていうのは?」

「いつもしゃべれないよ」と美雨はため息をつく。

「確かに。じゃあ『練習通りに』『気楽に』は?」

それは美雨にもイメージしやすそうな言葉だった。

「練習通りに気楽に、人前で話したい」

「それならいいね。秘訣は覚えているかい?」

「今一番やりたいことを、全力で、結果を気にせずにやる」

「君はやっぱり優秀な子どもだ」

チチチ、とリトが満足げに鳴いた。




1.その瞬間に、一番やりたいことをやる
2.自分の情熱を、全部かけてやる
3.結果へのこだわりを、ゼロにしてやる

リトノートに一際大きく書いてあるのを見ながら、羽鳥がリトに声をかける。

「これって、パクリ?同じこと言ってるチャネラー見つけた」

「だったらなんだ?」

「お前は誰なんだ?」

「そういう君は誰なんだい?」

やめてよ、と美雨は間に入る。この2人(?)は相性がいいのか悪いのか、しょっ中こんな言い合いをする。

「誰でもいいよ。リトはリトだし、羽鳥の願いを叶えてくれたし、悪魔じゃない」

「リトも」と小鳥にも向き合う。「羽鳥にわざと意地悪してるでしょ?」

「応援してるよ、美雨。ではまた来週」

そう言ってリトは突然黙り込んだ。リトの方から終わらせるのは初めてだった。