少女警官チカコ 第5話

ふしぎ。

交番の前に立っている女性が、ミスコントップ。


警察官に用事があるなら、言いにくればいいのに。


美人だし、どこかの男性にストーカーされている?


最近テレビでよく見るけど、有名人になっているのかな?


明日、職務質問してみよう。



美人さんのなぞ、私が解き明かします!
今日の仕事は朝から晩まで、美人さんのことを気にしていた。

いったい、なぜ?

あまりひどいと、公務執行妨害になってしまうかも。


早くても、明日。


悩みがあって、警察に相談したいけど、なかなか踏み出せずにいる可能性も。


私が声がけするんだ。
美人さんは何か悩みがあって、話す相手もいなくて、相談できなくて困っているならば、もっと早く聞いてあげたかった。

美人さん。明日、絶対声をかけるから心配しないでください。

警察官である私が、何でも聞きますから。
今日は美人さんに声をかける日。

いつも通り出勤する。


美人さんが警察署や交番の前にいる時間は、確か午前10時くらい。


その時間を、仕事しながら待っている。


みんなにばれないように、美人さんの悩みを聞こう!


ばれないようにって、田橋さんに無視しろと言われたから。


こないだの双子ちゃん誘拐事件の書類などを整理したり、自分の机をキレイにしたり。


美人さんと会話するのを考えながら。
しかし、正午になっても美人さんは来ない。


あまりやっちゃダメだけど、交番に電話しても、交番勤務の人は美人さんいないって言うし。


なんだか悲しくなってきた!


もしかして、事故?

キャー!


「チカコ。何をしている。」


焦って頭かきむしっていたら、田橋さんが来た。


「ちょっとやばいんです。いつも見てる人……えっと、美人さんが今日いないので。」


もう、悲しいことだから言ってました。
事件、事件だよ!

私の顔に汗が湧く。

メイクがぐちゃぐちゃになってしまう。


「まあ、いいんじゃないか。事件じゃないし。チカコ、気にしすぎだ。しっかり仕事しろ。」

「あ、はい。」


私のなかでは大事故だよ!


もしかしたら、美人さんが行方不明かもしれないし!
でも、確かに事件とは言いきれない。


だって、ミスコントップだからテレビやラジオの収録があったかもしれない。


考えながら、無意識にラジオのスイッチをまわす。


〈今日のゲストは、ミスコンでトップになった羽柿 璃倫さん……と言いたいところですが、まだ来ておりません。〉


え、やっぱり。

うん、やっぱり。


ダブルやっぱり。
ラジオの収録と行方不明が両方当たった。


誰に相談すればいいんだろ。


他の人にとっては、どうでもいいことだと思う。


誰か、通報や行方不明届してからじゃないと警察は動けない。


次どこかで見かけたら、何があっても声をかけよう。



美人さん、なぜいつも交番前に立っているんですか?


なぜ今日は来ていないんですか?
警察署付近の公園をながめる。


なんか木の下で騒いでいる人がいる。


その人は、土から出る何かを引っ張っている。


引っ張るのをやめて、こっちに走って来た。


警察署の入り口まで行った。


ん?


「公園に人の腕みたいなものが埋まっている。爪が青く、マニキュアのような感じ。女性かと思う。」


え?

殺人事件かも?