がらがらっと先生が弱く入ってきた。
「ほ、ほ、ほーむるーむをはじめます。」
「せんせーかわいいー」
野次が飛ぶ。
緊張しているのか震えた手で黒板に田々楽るいと書く。
「担任のたたらるいです。1年間よ、よろしくおねがいします」
「るーいちゃーん、よろしく〜!」
担任はひよっちい男の先生か。るいちゃんやら、るいるいやらいろんなあだ名がついてる。
自己紹介が簡単にはじまる。誰も聞かないけれど、美形の2人の時は質問やら何やら。
通り過ぎたらまた静〜かになる。興味の無い人の人となりなんて、石ころみたいなものだものね。
その後はみんなだるい眠いを口にしてがたがたと帰っていく。
先生は教壇で黒板の名前を綺麗に消していた。
「先生、図書室はどこですか?」
「図書室はね、E棟の二階にあるよ。待って、地図を書くね」
優しい先生だ、ノートをちぎって簡易地図を書いてくれた。
E棟は、資料や本が置いてあって普段は誰も寄り付かないみたいな雰囲気だ。
図書室に入るとしーんとしている。いい!これはいい!
人がいない雰囲気は好きだ。埃っぽいと思いながらも並べられている椅子に座ってみる。
ふわぁ、眠い、人がいないからこその大きなあくび
「ふはっ、完全に人がいないって思ってるっしょ」
!?誰!?
前の棚の影から現れたのは、クラスにいた黒髪の美形のほう
「あ、美形マン」
「んだよ、その名前、笑える」
笑う美形マンはまぶしい
人物を描きたいとおもうときもあるけど基本的に人は描かない
あぁ、描きたいこの人
でもどうせキモイとか言われて終わるならいい。
「………」
黙ってると、
「…まあヤり場を求めてきたカップルよりましか」
「なっ……」
「なにあんた、顔赤」
「……」
「…」
ああ、くそ気まずい
「ねぇ、美形マン」
「そのあだ名やめろ、変なセンスを感じる」
「名前知らない」
「お前同じクラスだろうが」
「?聞いてない、あんたの絵を描いてもいい?」
「?別にいいけど」
おお、戸惑わないのか、
「ほんと!?じゃあそこに座って!」
いつも持ち歩くクロッキー帳に大まかなバランスなどを書き込んでいく。
「あ、美形マンの名前は?」
「鈴木晴 晴は天気のはれ」
「へー素敵な名前」
「普通だろ、お前の名前は?」
「名前は基本的に素敵、瀬川海」
「…ほー」
でーきーたー
若干粗いけど!納得がいく。
「ありがと、鈴木晴、じゃっ」
「おい、フルネームかよ、というかせっかく描いたんだから見せろよ」
「……いいけど〜」
「んな嫌そうな顔すんな、どれどれ」
クロッキー帳を差し出す
「……すげぇ」
「じゃ!今度こそじゃーね」
「おう、瀬川海」
ははは、私は自分の名前大好き
海なんて素敵な名前、自慢したいくらいだもん
鈴木晴side
入学式はめんどくさいから行かなかった。
学校きたとたんまわりのケバいギャルに囲まれて質問ばっか。
友達の新庄佑雨がほぼ答えるから、俺はだんまりを決める
つまんねぇな、三年もこの学校で過ごすのか憂鬱だな
ケバい女達の間からちらっと染めてないナチュラルな髪の毛の女が自分の席に着くのが見えた
特段可愛いわけでもない、メガネもかけてないのでガリ勉でもない
ただナチュラル、その言葉が似合うやつだ
珍しい
ホームルームが終わってから、落ち着く場所を探そうと思って学校の中を歩いてみた
ラッキー、だれも寄りつかなさそうな図書室がある
これはいい。と思って、万が一人がきても死角になる低い棚の上で寝転ぶ
ちょっとしてから、人が入ってきた。
ちっ、人が来ねぇと思ったのに。
そーっと覗いてみる
と思ったら、ナチュラル女だ。
女は座ってから大きなあくびをかます
ふはっおもしれぇ、女っ気ゼロかよ
瀬川海と別れてから、図書室でくつろぐの再開
瀬川海が描いた俺の絵は特徴を掴みながら、個性が出ていた
あいつにはああ見えているのか
すげえやつ、才能あるやつだ。
瀬川海のざっくり短い黒髪ショートボブ、この学校ではすこし浮く
でもみんな興味がないようでよりつかないし、本人もまわりに興味がないらしい
俺は、女と話すのはあまり好きではない
耳障りな作った声に、つまらない会話
佑雨と話しても寄ってくるので正直うっとおしい
ただ、瀬川海とは話していておもしろいと思う自分がいた
不思議だ
海side
美術部に入ろうと思ったら、なかった
部活は運動部メインだからなぁ、しょうがないかぁ
でも先生はいるんだよね。女の先生、影薄いけど
とりあえずコンタクトが重要だ
職員室に行ったら、美術の米田先生は美術室にいるって言うからそこを目指すことに
ひえー、美術室5階?
4階あたりでしんどいわ
やっとこさついた…
「米田先生、瀬川といいます。美術室に入りたかったのですがないので、放課後ここ使ってもいいですか?」
「いいわよー、画材は?」
「あ、自前で」
「あたしのも自由に使ってもいいよ、」
「ありがとうございます」
かくして、放課後は美術室を使わせてもらうことになった
今は春。上を向くタンポポがとても綺麗だったから、タンポポを描くことに
普通に描いても面白くないから、下からタンポポを見上げる視線で描くことにした。
まさにアリ目線
納得いく色が出ないからかなり時間がかかる。
描き始めてから、5日目。
今日はできそうな気分だと、るんるんで美術室に行った。
早速、作業に取り掛かると、
米田先生と鈴木晴がダンボールを抱えて入ってきた。
「ごめんねー、鈴木くん。暇そうだったから」
「いいすよ、暇なんで」
「そう?ありがとう。あっ、瀬川さんと鈴木くん、飴食べない?」
「…味は?」
ぶどうか、みかんでありますように
「グレープとパイナップル」
「グレープ!」
「ほい、瀬川さんグレープ好きねぇ。
鈴木くんは?」
「あ、俺もグレープで」
うまうま。やっぱ糖分大切。
「瀬川海、美術部なん?」
「んーん、描いてるだけ」
「へー、見して」
見ても面白くないぞ
「そんな変な顔すんな」
「うまれつきですー」
「ははっ、おもしろ」
あっ、いい色が出来た。
ぺたぺたと塗っていく、ふんふん
結局その日の部活が終わる時まで鈴木晴はいた。