5月に入ったある日。

私は、1人で下校しようとしていた。

すると下駄箱の所で、ばったり蓮斗と出くわした。

「あっ蓮斗!」

「あぁ、あんたも今帰り?」

「そうだよ。」

「ふーん。...家、どこ?」

「んーと桜木商店街の近くだよ。」

「俺と同じ方向だ。...いっしょに帰る?」

え!?まじすか!

「なんだよその顔。嫌なの?」

「嫌じゃないけど。でも、もし蓮斗と帰ってるところを女子に見られたりしたら、私殺されるかもしれないよ!」

「大丈夫だよ。早く帰ろ。」

そう言って、スタスタ歩いていってしまう蓮斗をしょうがなく追いかける。

「ねぇ、歩くの速い。」

「あんたが遅いだけだよ。」

「私の短い足では、そんなに速く歩けないんですぅ。」

「はいはい。」

はぁ。足が長い人っていいな。

...それにしても蓮斗ってやっぱ、カッコイイな。

「ん?なーに?そんなに俺のこと見つめて。もしかして、惚れちゃったの?」

「ちーがーいーまーすー!ただカッコイイなって思っただけだもん。」

私がそう言った瞬間、蓮斗の顔が少し赤くなった。

「ほんとやめてよ。やっぱり菜奈って危険だわ。」

「危険じゃないし!」

危険ってどーゆー意味よ!

...あっ。そうそう。

ずっと聞こうと思ってた事があるんだった。

「ねぇ、蓮斗。」

「なに?」

「蓮斗ってさ、好きな人とかいないの?」

「さぁね。」

「...なにそれ。おしえてよぉ!」

「絶対やだね。」

「ケチ。」

「...泣かすよ。」

「ゴメンナサイ。」

蓮斗って最初あった時と性格が変わった!

なんか俺様みたいになってるし!

「それより、あんたこそ好きな人いるの?」

「気になってる人ならいるよ。」

「直哉でしょ。」

「...うん。」

なんか恥ずかしい。

ちらっと蓮斗の方を見ると、悲しそうな顔をしていた。

「え?どうしたの?」

「別に。」

蓮斗はそう言って私の手を握った。

「ちょっ、なにしてんのよ!」

「いいじゃん。菜奈と手、つなぎたい。」

カァァと顔が熱くなるのが分かる。

「ふっ。菜奈、顔が赤いけど?」

「うっうるさい!」

だってこんなイケメンにあんなこと言われたら、誰でも赤くなるよね?

「かーわい。」

耳元でささやかれて、ますます赤くなる。

「...やめてよ。恥ずかしい。」

「やめない。菜奈がそんなに可愛いから悪いんだよ?」

蓮斗はイジワルそうな顔をして、つないでる手にギュッと力を込める。

あぁ、もう私溶けちゃいそう。

これまであんまり異性と関わってこなかった私は、こんなことさせると恥ずかしくてたまらない。

「もう、菜奈ほんとにかわいい。そんなかわいいとこ他の男に見せたらだめだよ。」

「わ、わかったから離してよぉ!」

「ハハッ。はいはい。」

やっと蓮斗に解放された私は、すぐさま蓮斗から距離をとる。

「ねぇ菜奈。なんでそんなとこにいるの。もっとこっちにおいで。」

「やっやだよ。」

「ほらほらそんなに恥ずかしがらないでさ。」

「あっ!わっ私、家ここだから!」

蓮斗と色々してるうちに家の前に着いていたみたい。

「えぇつまんないの。...そうだ、連絡先交換しようか。」

「いいけど。ちょっと待ってて、ケータイとってくるね。」

そう言うとダッシュで家に入り、ケータイを手にして外に出た。

数分後、連絡先を交換し終わった。

「じゃ、また明日ね!バイバイ蓮斗!」

「うん、また明日。」

蓮斗が行ってからも、私は家の外にぼーっと突っ立ていた。

なんかすっごくドキドキした帰り道だった。

あんなにドキドキしたことないかも。

蓮斗は私のこと危険とか言うけど、蓮斗の方こそ危険だわ!