いつもの様に朝は優太と登校する。
学校までは少し遠いけど、優太と
話しているとバスに乗っている時間も
短く感じてしまう。


優太は私の知らない話しはしない。
私の趣味とか、好きな番組とか、
授業とか、テストの話とか。


「志絽、昨日授業休んだんだって?
体調悪かったのか?」


その質問に昨日のことを思い出して
心臓が飛び跳ねた。
思い出すのは、成央くんの顔。


「ちょっとね、貧血で。
保健室で寝たら元気になったよ!」


心配させないように力こぶを作って
優太に笑顔を向ける。


「相変わらず細い腕だな
まあ元気なら安心だわ」


優太も私に笑顔を向ける。
こうやって毎日、学校まで向かう。



優太と別れた後、教室に入ると
成央くんが窓際で女の子と話していた。


「成央くんって休みの日何してる?」


「特に何も。家にいたり外出たり」


女の子の質問に笑って答える成央くん。
私には言わないって言ってたのにな。
会話が耳に入りながらも、
私はいつものように席について本を読む。


「シロおはよう」


不意に後ろから声が掛かった。
その声に一瞬身体が震えるのが分かった。


「おは

「成央くん志絽といつの間に
仲良くなったの?」

「志絽あんまり人と話さないから
挨拶しても意味無いよ」


行き場のない言葉と惨めに開いた
口が恥ずかしくて仕方なくなる。
周りにいる女の子の声が、
私に突き刺さってくる。


「なんで?俺はシロと話したい
シロおはよう」


成央くんはお構い無しに私に
話し掛けてくる。


「おはよう、成央くん」


精一杯の笑顔を向けてみる。


「シロ今日朝一緒に来てたの誰?」

「あ、幼馴染みの優太だよ
隣のクラスにいる…」


成央くんは意味深に笑うと、そっか、
と言って席に戻ってしまった。
窓際にいたのは、私が登校するのを
見てたからなのかとひとりで
舞い上がってしまっていた。



いつものように先生の声と
蝉の鳴き声を同時に聞きながら
授業を受け、昼休みになった。


いつも、優太と優太の友達と
お昼を食べている。
お弁当を持って教室を出ようとした時


ガタンという音と、私は何かに
引っ張られ走り出していた。


着いた先は昨日の空き教室。
引っ張っていたのは成央くん。


「シロは幼馴染みに過保護に
育ててもらったんだな」