「凄い心臓の音」

くしゃっと笑う姿がまた私の鼓動を速くする。
何でだろう、最初から目が離せない。
私はどんどん成央くんに吸い込まれていく。


「授業、でないの?」

恐る恐る成央くんの顔を見る。


「俺は出なくてもいーの」

「私は、出ないと」

「なんで?」


成央くんはワイシャツの裾を弄りながら、
微笑みかけてきた。
なんで、なんて聞かれたら言葉が詰まって
でてこないよ。


「出たいなら、行けば?」


黙る私にまた囁いてくる。


「私、もっと成央くんを知りたい」


彼の笑顔に魅入られて、
思わず口が先走った。
びっくりしたような表情を見せたと思えば
口角がゆっくりと上がっていく。


「シロ、シロは出会った時から
俺の虜なんだよ」


笑いながら成央くんは得意げに言った。


すらっとした背丈も、サラサラの髪も
綺麗な鼻筋も、見透かすような目も。
あの河川敷で出会った時から、
私は成央くんに魅了されていたの
かもしれない。


どうしてだろう。
私は狭い世界の中で生きてきたからか
彼と一緒にいれば世界が変わるとか
自分じゃない自分に会える気がして
気づけば自然と彼の手を取っていた。


「シロ、いい子」

「もっと成央くんのこと教えて」

「俺の口からは何も言わないよ
シロ、自分で見て
俺がどんな奴なのか」


本当に、不思議な人。
この日から、私は成央くんがいないと
ダメになってしまうなんてあの頃は
思ってもいなかった。