「芝沢成央 です」



いつもと変わらない日常のはずだった。
目の前にいるのは、昨日の彼。

同い年とは思えないほど大人びた容姿に、クラス中が釘付けになっている。
目が合うはずもないのに、目で追いかけてしまう。



休み時間、クラスの皆に囲まれている成央くん。
私もあの中に入れたらと欲が出てしまう。



「志絽、昨日はごめんな」


ひとりでいる私に優太が話しかけてくれた。
違うクラスだけど、こうして優太が話しかけてくれると落ち着く自分がいる。



「大丈夫、優太は?怒られなかった?」

「お前、俺が怒られるとでも?今日から委員会なんだよ、志絽先帰る?」

「委員会なんだ、大丈夫だよ。頑張ってね!」



優太の優しさが身にしみる。
どうして優太はこんなに
私に優しいんだろう。



「気をつけて帰るんだぞ」



優太が私の席を離れると、
休み時間が終わるチャイムが鳴る。



「っあ、次移動教室だ」



教科書をまとめて席を立つ。
クラスにはもうほとんど人がいなかった。
場所を確認して走り出そうとした時、
何かが私の制服を掴んだ。