その背中を見送った後、
私はいつもの帰り道を歩き始めた。
他の生徒の声、風に揺れる木、
お気に入りの河川敷。
夕陽が沈み始める時間の
この河川敷が一番大好き。
ここで目を瞑ると時間が止まってしまったかのようにゆっくり流れている感じがする。
川の音、風の音。
不思議と心が落ち着く。
目を開けると、夕日の眩しさが…
入ってこない。
目の前にあるのは整った顔。
視線が重なり合う。
「こんなところで寝てると、連れてかれるぞ」
整った顔にある一部が動く。
ゆっくり、息を吐くように。
「聞いてるんか」
ぱちん、と何かが弾けるような声に、
ハッと目を覚ます。
夕日に染まったその人は、
見たこともないほど綺麗だった。
「私を、連れていくの?」
気がつけば、私も吸い込まれるように声を発していた。
ふっと、吐息混じりに彼は笑った。
不思議な人…。
「早く帰れ。日が落ちる。」
夕日が私達を染め、
眩しさに彼は目を細めた。
私が起き上がると、
彼の背中が遠くに見えた。
平凡な毎日に飽きていた私の中に、
何かが変わる音がした。