「えっ?」

状況を飲み込めていない私に、早くも勝ったと言わんばかりの笑みを浮かべている清水。

「深川が参加するなら、行けない理由なんてないよな?」


こんなの、最早私に選択肢なんかない。

私だけが飲み会に参加することを、真樹は良くは思わないし、寂しがるだろうからというのを理由に断りきろうとしていた。それは、真樹は飲み会に参加しないだろうと思っていたからだ。

会社では無駄に人当たりの良い営業マンを演じている真樹は、飲み会の誘いにはかなり誘われている。しかし、私と交際をしていると社内に公表してからは、何らかの理由をつけて殆ど断って来ていたはずだった。それなのに、いきなりどうしたと言うんだ。こんなの、私は聞いちゃいない。


「真樹、参加するって言ったの?」

「うん。そう」

「そっか。そうだったんだ」


苛立ちや憂鬱な気持ちを抑えて、無理矢理口角を上げた。すると、清水の方もぐんと口角を上げる。


「それじゃあ、来週末楽しみにしてるよ」


そう言って、右手を挙げた彼は、笑顔のままで分かれ道を私とは反対の方向に進んでいった。