「だっ、だってそうじゃないですか。私が先輩の隣にいたいと言ったら、先輩は私を受け入れてくれたじゃないですか。なのにーー」

「勘違いすんなよ。お前が勝手に俺の隣に座ってたってだけだろ。それを俺が受け入れたとかって、発想がすげーな」

「そんなっ、だって……」


先輩は彼女のところまで歩み寄っていき、体ひとつ分の距離でピタリと止まった。


「だって、なに?」


せせら笑う颯ちゃん。そんな颯ちゃんに臆しながら、懸命に言葉を探してる。彼女の両手は、プリーツスカートの裾をギュッと掴んで離さなかった。



「お前は俺とどうなりたいわけ?」



その一言に、彼女の口は再び動いた。



「彼女……いえ、友達でもいいです……」



あっ、それは言っちゃダメーー。


そんな風に思ったのと同時だった。颯ちゃんは侮蔑を込めた目で彼女を見下ろした。


「ざけんな。そんな下心ある奴と友達なんてなれるかよ。気色悪い」


……言葉のチョイスがまた酷い。そして、その言葉は離れた場所にいる私の心をも突き刺した。

いや、私は元々下心があったわけじゃないけど……でも、結果としてそうなった。

だから颯ちゃんの言葉は、離れたところにいる私にまで、ダメージを与えていた。


私がダメージから立ち直れないそんな隙に、彼女はさらに食い下がった。


「じゃあ、斉藤さんは? 彼女だって下心あったんじゃないですか? 現に前まで一緒にいたのにいないじゃないですか。それって他の女子と同じだったって事じゃないんですか?」


……そう、だよね。やっぱりそう思われるよね。いや、実際はそうだったんだけど。

私の胸はチクリと痛んだ。だからこそ、颯ちゃんのこの後の言葉に私は驚いた。


「ーーお前に、あいつの何が分かるんだよ」


その言葉は不意打ちだった。

言い放たれたもの言いが、私を庇ってくれてるように思えて、私は思わず胸を押さえた。

きっと颯ちゃんはそんなつもりで言ったんじゃないだろうけど、私も、そして颯ちゃんと向き合う彼女もそれを同じ意味に捉えていた。


「……なんで? なんで、斉藤さんの事は庇うんですか? あの人だって同じじゃないですか!」

「はぁ? どこがだよ」

「だってあの人、先輩の元カノのーー」