「なんか、やな感じじゃん?」


りょうちんも私の隣に戻ってきて、事の一部始終を見守ってる。

この場にいる誰もが颯ちゃん達の動向に目を向けている中、一年女子はオロオロしながら口を開いた。


「わ、私は、先輩のお友達です……!」


そう言った後、颯ちゃんの反応を確認するみたいに隣を見やるけど、颯ちゃんは相変わらず我関せずって態度を崩さない。


「友達って、アンタは元カノでしょ。なんで友達? ってか友達ってどーいうものなのか、ちゃんと知ってる?」

「……知ってます。だからーー」


彼女は懸命に言い返すけど、虫の声みたいな弱々しいもの言いでは、あの先輩元カノに勝てるわけがない。


「さっきから見てたけどさ、アンタらの関係って友達じゃないじゃん。こういうのは下僕って言うんだよ」

「そんなっ!」


ショックと苛立ちをその表情に映し出した彼女は、震えながらも立ち上がった。その瞬間だった。

我関せずな颯ちゃんが、突然声を立てて笑った。


「ははっ。確かにな」


その笑い声にみんなの視線は颯ちゃんに注がれた。


「青井、アンタなに考えてんの?」


先輩元カノの疑念の目が颯ちゃんを刺す。そんな視線なんて気にもしない颯ちゃんは、せせら笑いながら話を続けた。


「友達ねぇ〜。俺、お前の名前すら覚えてないんだけど?」


辺りが騒然となった。そんな事なんてお構い無しに、颯ちゃんは缶コーヒーを飲み干して、食べ終えたゴミをゴミ箱へと捨てて、その場を後にした。


……なっ、なんで。


「この状況で、よく立ち去れるね。かすみ、青井先輩のどこがいいの?」


りょうちんの投げかける疑問に答える間も無く、私は颯ちゃんの後を追った。