「でも、あの子って見覚えある? なーんか、前にも青井先輩の隣にいなかったっけ?」


りょうちんに言われてハッとした。そうだ、あの子は前に颯ちゃんの隣でお昼を食べてた元カノだ。

首に巻いたリボンタイが私達と同じ色の一年。彼女は嬉しそうに颯ちゃんの隣で笑顔を振りまいていた。ほんのり頬を赤らめながら。


「って事はあれか、先輩とうとう本命を見つけたって事か? 先輩の日替わり彼女達って、今まで一度も2回付き合った子はいなかったじゃん?」

「そうだけど、でも……それは、ないよ」


ボソリと呟いた私の言葉が、思ったよりもトーンが低くて、りょうちんは黙って私を見つめた。


それはない。颯ちゃんがあの子を好きな訳ない。あの子が私のお姉ちゃんを超えれる訳がない。

あんな日替わりの彼女だった人達の中に、颯ちゃんの心を射止めた人はいない。

遠くから、ただ見つめてただけだったけど、それでも、私には分かるよ。

ずっと、長い間見つめてたから、よく分かる。お姉ちゃんに見せてもらった颯ちゃんの写真は、昔見た私が好きだった頃の笑顔がそこにはあった。

だけど、今の颯ちゃんは違う。楽しそうな、幸せそうな、そんな顔が見えないから……。


「かすみのお役目は本当に終了なんだね。あんな嫌がらせはされなくなるから良かったじゃん」

「……りょうちん」

「んー?」


りょうちんは颯ちゃんの方を一瞥(いちべつ)した後、くるりと身体を反転させて来た道を戻ろうとしていた。

私はまだ動けずに、颯ちゃん達を真っ直ぐ見つめながら、口を開いた。


「私ね……先輩の事が好きなの」