「……で、話してくれんでしょーね?」


休憩時間にトイレへ逃げようとしたりょうちんが、しっかり私の脇を固めて逃がさない。

一緒にトイレまでついて来てくるし、逃げられないって思った私は、観念して人気のない場所へと移動した。


「ごめん、詳しくは言いたくないんだけど……」


私が言葉を濁してるのに、りょうちんってばあっさりこう言いのけた。


「じゃあ詳しくなくていいじゃん」


詳しくなくてって……。


「……とりあえず先輩との契約は解消しました」

「なんで?」

「それは黙秘で」

「ふーん」


理由を話せばお姉ちゃんの事も話さないといけなくなる。りょうちんになら話してもいいかもしれないけど、今は心が重すぎて、話す労力すら捻出できそうにもない。

全てを話せば長くなる。その気力が今の私には残っていなかった。


ーーと、そんな時だった。
私達が話しながら何気なく足が向いた先、食堂近くのベンチには、颯ちゃんがいた。


「あっ、あれじゃん。あの子がかすみと取って代わって、今かすみポジションにいる子じゃん」


私は一本の大木になったように、足がそれ以上動かなくなった。

現実をまざまざと見せつけられて、分かっていたけど、やっぱりショックはぬぐいきれなかった。