「すみません!!私前見てなくて…」
「俺も俺も。お互い様だよ。大丈夫?」
「私は大丈夫ですけど、服が…!」
ぶつかった時にこぼれたのか、相手の制服はお茶でびしょびしょだ。
「いいよこれくらい。まだ暑いしすぐ乾くって。」
「そんな、ダメです!!風邪でもひいたら大変ですので!」
スカートのポケットに入っていたハンカチを取り出し、びしょびしょになったカッターシャツを拭く。
「いいよ、本当に。こぼしたの俺だし、ハンカチ汚れるよ」
「でも、私がぶつからなければこんなことにはならなかったので。授業もまだありますし、本当にどうお詫びしたらいいか…」
「お詫び、ねぇ」
半泣きになっている私を見兼ねてか、相手はハンカチを持った私の手をとる。
「そこまで言うなら、お詫びしてもらおうかな」
「はい、是非!!」
「はは、変な子」
あれ、この人どっかで見たことあるような。
顔を上げた先には、少し大きめのフレームの黒縁メガネの奥で目を細めて優しく笑う男子。
カッターシャツの襟についたエンブレムの学年カラーは青。
やってしまった。3年生だ。