「ちょっと考え事をしていて」
「そうか。ならいい」
ぽん、と頭の上に乗せられる手。
「今から少し仕事の打ち合わせをするが、気にせず食え。食いきれなかったら残しても」
「そんな!!せっかく作っていただいたのに残すなんて勿体ないことできませんっ!」
思わず勢い良く立ち上がってしまい、ハッとする。
「あ、いや、すみません、はは…」
なんかすごい食い意地張ってるみたいになっちゃって恥ずかしいや。
「ずっと気になってたけど、まさかそれ綾が作ったの?」
鞄の中から書類を取り出した睦月さんはパスタと雨宮さんを交互に見る。
「だったら何だ。お前の分はないぞ」
「いや、それはいいけど綾が料理できるなんて知らなくて」
「え?」
「いつも外食か買い弁ばっかりだし、全然出来ないのかと思ってたけど」
「こんなの緊急時か気が向いた時だけだ。ほぼやらん。4年に一回くらいだな」
「なにそれオリンピックか何か?」
「まあ、そんなとこだ」
まさか、そんな貴重なものを食べていたなんて思ってなかった。
雨宮さん手料理というだけでも感動していたけど、尚更味わって食べないと。