今日も綺麗にアイロンがけされた黒のスーツを身にまとった睦月さんの瞳はぎろりと雨宮さんを睨んだかと思うと、今度はびっくりして固まったままの私を映す。
「昨日は掴みかかって悪かったわよ。こいつってば大事な話はいつも後回しなもんだから、今回も事前に聞いてなくてびっくりして思わず、ね」
「人間そういう時こそ本性が出るもんだからな。恐ろしい女だぞ、こいつは」
「………綾、少し黙っててもらえる?」
まるで漫才みたいにテンポのいい会話に、よっぽど仲がいいんだなと思う。
美男美女、隣に並んでも見劣りしないし、やっぱり大人は違うな。
相変わらず目の前で言い合っている2人を眺めていると、また胸のあたりがちくんと傷んで。
また、だ。
さっきと同じ、嫌な痛み。
少し苦しくて、息が詰まるようで、目の前の出来事から目を逸らしたくなるような。
でも、なんで?
なんで私は仲のいい2人から目を逸らしたくなるんだろうか。
「…大丈夫か」
「えっ、はい!」
私が俯いていると、いつの間にか食べ終わった自分の食器を片付けた雨宮さんが隣に腰掛けて顔を覗こんでいて。
「頭、まだ痛むか」
「あ、いえ、そういう訳ではないんですけど…」
本当は、胸が痛いんです
なんて言ったら余計心配かけちゃうよね。