パスタとサラダを交互に食べ続ける私を見て、雨宮さんもようやく食べ始める。
「すみません、余計な心配をかけてしまって」
「余計なんかじゃないだろう。短期間とはいえ一緒に暮らしているんだ。心配くらいさせろ」
雨宮さんはぶっきらぼうで、気難しそうで。
言葉遣いだって何だか堅苦しくて、取っ付きにくい人だと思っていたけど。
「…優しいんですね」
「そうでもない。当たり前だろう、このくらい」
「ふふ、そうですね」
照れたのか、パスタを頬張ったまま目をそらす雨宮さんが可愛くて思わず笑ってしまう。
「でもお料理できるなら早く言ってくださいよ。私なんかよりお上手ですし、今まで張り切ってたのが恥ずかしいです」
「そんなことないだろう。昨日のお前のも十分美味かった。」
「でも昨日のはほぼ初めて作りましたし、あまり自信もなかったので…」
「じゃあ、明日からまた自信があるやつを作ればいい」
「え?」
「だから、お前の飯が食いたいと言っているんだ」
え、うそ。うそだ。
「だって、トラウマは」
「あれはもういい。ただ少し、お前の言う"魔法"ってやつを信じてみたくなっただけだ」
それはまるで、温かいスープを飲んだ時のような感覚。
じんわりと体中に広がって、ほう、と思わず息をつきたくなるような、そんな幸福。