「なんだ、顔が真っ赤だぞ」
「ひゃ、」
家に着くと、頬にピタリとあてがわれる缶ビール。
キンキンに冷えているけれど、いまはそれに負けないくらい私の顔も、あつい。
「熱でもあるのか」
「いえ、これはちょっと、びっくりして…」
「何にだ」
「っ、お姫様抱っこなんて初めてだったので!」
これが赤くならずにいられますか…!
私が声を張り上げたことに驚いたのか、目を丸くする雨宮さん。
「…なんだ、意外だな」
「え?」
「お前は世話焼きで、家事の腕もそこそこにいい。多少お節介ではあるが、人懐っこくて可愛い顔をして笑うだろう。だからそれくらいのこと経験済みだとばかり思っていた」
「か、かわっ…!?!?」
なんだか、今日の雨宮さんは少しおかしい。
「私、生まれてこの方好きな人すらいた事ありませんので…!」
「そうか。それじゃあ全部が全部初体験ってわけだ」
「もう、変な言い回ししないでください!」
「変とはなんだ。いやらしい」