雨宮さんはバラエティ番組に出ている時も気さくとは言えないようなキャラだし、どうしてこの監督さんは雨宮さんを選んだんだろうと思ったけれど、その答えはすぐに分かった。
「……別人、でしょ?」
美月の声に頷かざるを得なかった。
だって、遠くからでも撮影が始まったことがすぐ分かってしまうくらいに、一瞬にして雰囲気が変わったんだもん。
立ち振る舞いからして全く別の人だ。
相手役の女の子に話しかける表情も、仕草も、歩き方も、どこを探したってそこに雨宮さんはいなくて。
頭のてっぺんから足の先まで、役になりきっている。
素人の私から見てもすごい演技だってことはすぐに分かった。
すごい。すごいなぁ。
本当にすごい人なんだなぁ、雨宮さん。
「いやぁ、今日は付き合ってくれてありがとう!」
撮影が終わると、上機嫌の美月と駅まで歩いた。
なんだかんだ最後まで見学してしまった私は、美月と別れるとその足で予定より少し遅い買い物に向かう。
電車に揺られてまた3駅。そこから歩いてまた10分。
雨宮さんのマンションから一番近いスーパーにつくと、さっそく晩御飯の材料をカゴに入れていく。