雨宮さん、昨日に比べてだいぶ顔色もいい。




監督さんや共演者さんと打ち合わせをしているのか、台本を片手に真剣な顔で時折頷いて、ふとした瞬間に見せる笑顔はテレビの顔。




雨宮さんは笑った顔さえ仕事とプライベートを分けてるのかな。



だとしたら、家でたまに見せてくれるあの顔は、プライベート用?




そんな、まるで私の前ではリラックスしてくれてるみたいなこと言ったらまた怒られちゃうかな、なんて。





頭の隅っこに不機嫌モードの雨宮さんの顔が浮かんで思わず笑いそうになった時、こっちを向いたスーツの雨宮さんと目が合ってしまった。



や、やばい!!




「ちょっと、今綾と目、あったよね!?!?」



真横にいた美月は大はしゃぎ。




その隣の私はとっさにしゃがんで目をそらしたものの、これじゃあ逆に目立ったかも、と即後悔。




「ちょっと彩羽、腰抜かさないでよ?まだまだこれからなんだから」



「こ、これからって」



もう、十分です私。




目が合った瞬間、一瞬顔をしかめられたし、絶対気付かれた。





今日の夜、なんて言われることやら恐ろしいので今すぐにでも帰宅したいのですが…って、美月が私の腕をがっちりホールドしてて無理そうですけど。とほほ。




わたしががっくりと肩を落としていることなんかお構い無しに美月は隣で熱心に解説を始める。




「今回は学園モノで、美術教師の役なんだって。いつもはクールな役が多いけど、これは気さくな新任教師って設定らしいよ」




「気さくな新任教師、ですか」




うん。間違いなく普段の雨宮さんとは正反対の場所にある役だ。